GT300シーズンレビュー『白星の価値、黒星の意味』【2023スーパーGT総集編】

Discussion in 'News and Articles' started by Auto News, Dec 11, 2023.

By Auto News on Dec 11, 2023 at 1:26 AM
  1. Auto News

    Auto News Moderator Staff Member

     第7戦オートポリスの埼玉トヨペットGB GR Supra GTとmuta Racing GR86 GTが見せた20周以上にわたるテール・トゥ・ノーズのトップ争いは、記憶に残る名勝負だった。そして、その戦いはGT300のチャンピオンを決定づける大一番であった。

     12月1日発売のauto sport臨時増刊『2023-2024 スーパーGT公式ガイドブック総集編』では、大混戦に始まり一騎打ちの終結となったGT300シーズンレビューを収録。ここでは、その一部を抜粋してお届けする。

    ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

     毎年、さまざまなドラマが生まれるGT300クラス。2023年シーズンも見どころの多い1年であったが、紙一重のところで勝者と敗者が決まるというレースが非常に多かった。結果的に、52号車埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰)がライバルとのポイント差を大きく広げてシリーズチャンピオンに輝いた。ただ、シーズン前半戦は、52号車の独走劇を予想することができないほど“大混戦”となっていた。

     レース中に天候が目まぐるしく変わった開幕戦では、65号車LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗)がポールポジションからレースをリードするも、序盤にはひょうが混じった大雨が降り始め、各車がイレギュラーでタイヤ交換を敢行。20周目の時点で、ほぼ全車がウエットタイヤに履き替えた。

     すると、それまで降り続いていた雨はピタリとやみ、路面は急速に乾いていく。各チームはスリックタイヤを求めて再びピットインしていった。それまでは65号車がレースをリードしていたが、各車がスリックタイヤに履き替えると、トップに立っていたのは18号車UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/小出峻)だった。

     実は上位陣よりも2~3周早くスリックタイヤへの交換を完了していたのだが、結果的に1番タイムロスが少なく、ピットアウト後にペースを上げられたことで6番手から一気に大逆転を果たした。

     その後、サーキット近くに落雷が確認されたとのことで赤旗中断。レース続行を試みるが、再び強い雨に見舞われ、GT500クラスのトップが全体の3分の2を消化したところで終了となり、18号車が開幕戦を制した。なお小林崇志は記念すべき100戦目での勝利、相方の小出峻はデビューウインの快挙を達成した。

     ゴールデンウイーク開催の第2戦富士で速さを見せたのが、2022年の王者である、56号車リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ/名取鉄平)。予選からライバルを上回る速さを見せ、決勝では2周目に給油のみを済ませる変則的な作戦に出た2号車muta Racing GR86 GT(堤優威/平良響)との一騎打ちに。

     100周を均等に3スティントで割る正攻法で臨んだ56号車が先行したが、2号車の平良響は初優勝を目指して終盤に猛プッシュ。ファイナルラップは1秒を切る僅差の戦いとなったが、56号車の名取鉄平がトップを守り切り、0.6秒差でトップチェッカー。満面の笑みでマシンを降りる名取と、悔しさに満ち溢れた表情の平良。将来、GT500クラスへのステップアップを目指すふたりの明暗が別れた一戦となった。

     その2号車は、第3戦鈴鹿で45kgのサクセスウエイトを積みながらも、トップ争いに加わる走りを披露。予選4番手からスタートすると、ここでも序盤に1回目のピットストップを済ませる戦略でレースを進めていった。

     順調にレースを進めていくが、2回目のピットストップからコース復帰直後の1コーナーで痛恨のコースオフ。ここで数秒をロスし、背後には同じ戦略を採っていた7号車Studie BMW M4(荒聖治/柳田 真孝)が接近。デグナーカーブで順位が入れ替わった。

     なんとかコース上で逆転したい2号車だったが、58周目のシケイン手前で複数の車両による大クラッシュが発生。防護フェンスが大きなダメージを受けたため、レースは赤旗で終了することとなった。一方、2号車は2戦連続で悔し涙をのんだ。いま思うと、ここから運命の歯車が動き出していたのかもしれない……。

    ■苦い経験を糧にしてきた強さ


     シーズンが後半戦に入ると、残り3戦というところで上位5台が10ポイント以内にひしめく、近年まれに見る混戦模様から誰が抜け出すかに注目が集まった。

     迎えた第6戦SUGOで速さを見せたのが、ここまでコツコツとポイントを積み重ね、ランキング5番手につけていた52号車。途中、大きなアクシデントによる赤旗中断がありながらも、レース後半は力強くトップを死守。このまま今季初優勝かと思われたが、最終コーナーからの登り坂で突然失速。まさかのガス欠だった。

     その横から2番手を走っていた18号車が駆け抜け、今季3度目のトップチェッカーを受けた。呆然とする52号車メンバーに対し、18号車ピットはお祭り騒ぎ。チャンピオン争いの主導権は18号車に移ったかに思えた。

     しかし、レース終了から約2時間が経過したところで発行された公式通知に『No.18再車検不合格』が記載されていた。最低地上高がわずかに足りず失格。1度は悪夢をみた52号車に勝利が舞い込む結果となった。思えば、これがシーズンの行方を左右したターニングポイントのひとつだっただろう。

     チャンピオン争いの前哨戦的な意味合いを持った第7戦オートポリスで、52号車はさらに力強い走りを披露。このレースも450kmのフォーマットで途中に2度の給油が必要なのだが、通常は早めに済ませる1度目のピットインのタイミングを31周目まで引っ張った。ここで給油のみを行ない、45周目に川合から吉田へ交代、トップでコースに復帰する。

     そこに勝負を挑んだのが2号車。こちらは57周目に2度目のストップを完了すると、その10周後には吉田の乗る52号車の背後に接近。20周以上に渡って緊迫の接近戦を展開した。お互いに消耗が進んでいくタイヤをコントロールしながら、ひとつのミスも許されない濃密なバトルを披露した。

     結果的に順位は入れ替わらず、52号車がチャンピオン獲得に大きく近づく今季2勝目を飾った。残るは最終戦もてぎ大会という状況で、52号車が20ポイントをリード。2号車は最終戦でポール・トゥ・ウインが絶対条件となった。

     迎えた最終戦のもてぎ大会、52号車が圧倒的に有利という雰囲気が漂うなか、わずかな可能性を信じて突き進んだのが2号車だった。公式練習から毎セッションでトップタイムを記録し、逆転への第一条件となる予選でポールポジションを勝ち取った。

     決勝もそのまま逃げ切りたいところだったが、予想に反して気温が低くなり、序盤には雨もパラついた。これが2号車にとっては逆効果となり、徐々にポジションを下げていく。それでも、逆転チャンピオンをあきらめない彼らは、残り10周を切って再び雨が降り始めると、真っ先にウエットタイヤに交換。順位を下げてでもトップに返り咲く可能性を探り続けた。

     これに対し、ポイント圏内を走っていた52号車はライバルの猛攻を受けながらも、なんとかコース上にとどまり、スリックタイヤでゴールを目指すことを決断。最後までどちらに勝機が転ぶか分からない緊迫したチャンピオン争い。最終ラップまで息をのむ瞬間が続いたが、52号車は7位でフィニッシュ。自力でチャンピオンを決めた。

     過去にも優勝を飾るなど、力強い戦いぶりを見せてきた52号車だが、GT300頂点の座には手が届いていなかった。今シーズンはノーポイントとなったのが第5戦鈴鹿のみという安定感の高さが、初戴冠への大きなきっかけとなった。

     エースの吉田も「最終戦までチャンピオン争いができたということはこれまでも何回かあったんですけど、最後に詰め切れない部分がありました。だから今年は『同じようなミスをせずに自分たちのベストを尽くす』というレースを心がけてきたんですけど、本当にどのレースも紙一重というところがあって、それらの“良い方”を拾えてきていたかなと思っています」と振り返った。

    ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

    『2023-2024 スーパーGT公式ガイドブック総集編』では、この他にも吉田広樹と川合孝汰のチャンピオンインタビュー、ランボルギーニ・ウラカンGT3 EVO2のマシン解説で2023年シーズンのGT300を振り返っている。
    .
    『2023-2024 スーパーGT公式ガイドブック総集編』GT300シーズンレビュー『大混戦の始まり 一騎打ちの終結』
    .
    『2023-2024 スーパーGT公式ガイドブック総集編』GT300チャンピオンズボイス 吉田広樹編
    .
    『2023-2024 スーパーGT公式ガイドブック総集編』GT300チャンピオンズボイス 川合孝汰編
    .
    『2023-2024 スーパーGT公式ガイドブック総集編』ランボルギーニ・ウラカンGT3 EVO2のマシン解説
    .
    2023-2024 スーパーGT公式ガイドブック総集編の詳細&購入はこちらから(クリックorタップ)

    .
     

Comments

Discussion in 'News and Articles' started by Auto News, Dec 11, 2023.

Share This Page