【F1チーム別技術レビュー:マクラーレンMCL60】空力担当プロドロモウの能力を有効活用。新技術体制による開発が成功

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By Auto News on Jan 14, 2024 at 2:21 PM
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     2023年F1各マシンのシーズン通しての変化を、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルがまとめた。今回は、マクラーレンMCL60の進化を伝える。

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     開幕直後、マクラーレンは、MCL60のあまりの遅さに苦しんだ。しかし最終的にレッドブルに次ぐF1マシンという高い評価を得たのは、ライバルチームの進化に右往左往することなく、自前の空力技術開発を粛々と進めたおかげだった。

     マクラーレンが2023年に成し遂げた進歩の程度は、驚くべきものだ。序盤4戦でのMCL60は、レッドブルに平均0秒7遅かった。それがシーズン終盤のオースティンとインテルラゴスの間では、両者の差は0秒14秒まで大幅に縮まったのだ。これはアルファタウリAT04を超え、2023年F1マシンの中で最大のパフォーマンス向上だった。
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    2023年F1第23戦アブダビGP ランド・ノリス(マクラーレン)

     空力コンセプトを完全に外していたことを思い知らされた開発チームは、その後アゼルバイジャン、オーストリア、イギリス、シンガポールと、矢継ぎ早に4段階の大幅アップデートを敢行した。

     パーツ製造上の制限から、すべての変更を一度に導入することは不可能だ。第4戦アゼルバイジャンではまず、フロアに改良を施した。そして第10戦オーストリアでは、内部ラジエーターの位置を変更し、左右サイドポッドの空気取り入れ口の下にスペースを設け、車体のアンダーカットを強調した。

     第16戦シンガポールでは、MCL60のアンダーボディを上から下まで徹底的にオーバーホール。ベンチュリトンネルへの入り口とフィンが再設計された。
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    マクラーレンMCL60 F1シンガポールGPでのアップデート

     開発は主に空力面に集中し、中でもフロア下に重点が置かれた。これらの修正によって、MCL60のアキレス腱であった低速コーナーでの挙動が劇的に改善。ランド・ノリスとオスカー・ピアストリが、揃って好成績を挙げるようになっていった。
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    マクラーレンMCL60

     ただし弱点が全て解消したわけではない。バクー、スパ、モンツァ、ラスベガスで明らかになったように、ストレートでは苦しみ続けた。とはいえ全体的な性能向上を優先した結果、MCL60は王者レッドブルのRB19に次ぐ2番目に速い車となった。
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    2023年マクラーレンとアストンマーティンのPPとのタイム差(%)

     MCL60の開発時点では、チームはまだ時代遅れの風洞を使わざるを得なかった。それにもかかわらず、なぜこれだけの飛躍的な性能向上に成功したのだろう。

     チーム代表のアンドレア・ステラによれば、「以前の組織における運営では、ジェームス・キー(当時のテクニカルディレクターで、古巣のアルファロメオに2023年復帰)が中心になりすぎており、特に空力専門家のピーター・プロドロモウの貢献が十分に活用されていなかった」ということだ。
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    ピーター・プロドロモウ(マクラーレンの空力部門テクニカルディレクター)

    「技術的な再構築が、決定的なカギになった。プロドロモウに指揮を委ね、空力担当ディレクターのジュゼッペ・ペッシェをサポートする。こうして各エンジニアの責任が明確になり、これまで短期的な結果を求めがちだった空力部門で、中長期的な開発が可能になったのだ」

     たとえ時代遅れのツールでも、それを有効活用する。そして各エンジニアの才能を存分に発揮させることで、クルマの変革に成功した。 まるでキーの離脱が、ファクトリーの皆を解放したかのように。

     さらに今月からは、フェラーリで車両コンセプト責任者を務めていたデイビッド・サンチェス、そしてレッドブルでエイドリアン・ニューウェイの側近だったロブ・マーシャルという二人の上級エンジニアが加入。2024年のマクラーレンは、いっそうの戦力強化を成し遂げるものと期待される。
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    2023年F1第17戦日本GP オスカー・ピアストリ&ランド・ノリス(マクラーレン)
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    2023年F1第18戦カタールGP表彰式 左から2位オスカー・ピアストリ(マクラーレン)、ジャンピエロ・ランビアーゼ、優勝マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、3位ランド・ノリス(マクラーレン)

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