【F1チーム別技術レビュー:アルファタウリAT04(1)】“最も遅いマシン”の汚名を返上。イギリスの新フロアが転機に

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By Auto News on Jan 8, 2024 at 3:54 PM
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     2023年F1各マシンのシーズン通しての変化を、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルがまとめた。まずは、アルファタウリAT04の進化を、2回に分けて伝える。

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     デビュー直後のアルファタウリAT04は、明らかに素性の悪いマシンだった。しかしシーズン終盤には、コンスタントにトップ10内に入るまでに進化を遂げる。グリッド上で最も遅かったのが、レッドブル、メルセデス、フェラーリ、マクラーレンに次ぐ、5番目に速いマシンになったのだ。着実な開発と、レッドブルRB19からいくつかのパーツを移植されたおかげだった。
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    2023年F1第23戦アブダビGP 角田裕毅(アルファタウリAT04)

     シーズン開幕当初のAT04は、低速コーナーでのダウンフォースが明らかに不足していた。低速コーナーでは、ストレートや高速コーナーに比べて車高が上がる。その条件下で、一気にダウンフォースが減少する傾向があった。そのため開幕戦バーレーン予選での角田裕毅は、ポールシッターのマックス・フェルスタッペンに2秒802の大差をつけられていた。それが最終戦アブダビでは、両者の差は0秒523まで縮まっていた。

     それだけの飛躍は、いかにして生まれたのだろう。最初からネタを明かせば、魔法などはない。忍耐強く、長く単調な開発作業を続けただけなのだ。

    「我々はベストの状態からはほど遠く、かなり弱い立場で2023シーズンをスタートした。 言い換えれば、改善の余地はたくさんあったということだ」と、チーフレースエンジニアのジョナサン・エドルズは説明する。

    「絶え間なく開発を続けたものの、コンスタントにポイントを獲得するまでには、かなりの時間がかかってしまった。たとえ低迷の原因を特定できても、その後には膨大な変更プロセスが待っていたからね。目標数値を変更し、新しい部品を設計し直し、製造し、ようやく現場に持ち込む。そのため9月のシンガポールまで、具体的な成果が出ることはなかったのだ」

     大躍進したマクラーレンほどではなかったが、イタリアの小さな部隊が成し遂げた進歩は十分に印象深い。ポールタイムとの差を%で表示した以下のグラフで明らかなように、開幕戦ではアルファロメオ、ウイリアムズ、ハースに負けていたアルファタウリは、その後(いくつかのアップダウンがあったものの)予選Q3に進める車に生まれ変わった。
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    2023年F1 アルファタウリ、アルファロメオ、ウイリアムズ、ハースのPPとのタイム差

     シーズン中のアップデートは、第3戦オーストラリアGPから始まった。現在のF1マシン開発の目玉であるフロアに重点を置いた改良だった。

     3カ月後のイギリスGPでは、フロアとディフューザーにさらなる仕様変更が加えられ、エンジンカウル後端も形状変更された。その目的は、コーナリング時に起きるヨー運動(垂直軸を中心とした回転運動)の際に、前輪の回転によって発生する乱流の影響を軽減することだった。さらにフロアの端に沿って流れる渦の力を増大させ、特に旋回時にフロア下へ乱流が流れ込むことも、かなり防げるようになった。
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    2023年F1イギリスGP ニック・デ・フリース(アルファタウリAT04)

     テクニカルディレクターのジョディ・エギントンによれば、このフロア周辺への大幅アップデートが、AT04を理解する上での重要なステップとなったという。

    「この改良版フロアが、私たちにとって新たなベースになってくれた。その結果、その後のすべてのアップデートはこのコンセプトに基づいて構築されるようになった。おかげで私たちは、こう断言できるようになったんだ。『うまくいっている。風洞実験で適用した哲学が、実走でもそのまま使えている。この方向に進み続けよう』とね」

    (その2に続く)

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