WECハイパーカーに注目/エンジン大好き世良耕太が選ぶ2024年に期待するモータースポーツマシン

Discussion in 'News and Articles' started by Auto News, Jan 7, 2024.

By Auto News on Jan 7, 2024 at 2:55 AM
  1. Auto News

    Auto News Moderator Staff Member

     モータースポーツや自動車のテクノロジー分野に精通するジャーナリスト、世良耕太が2024年に期待するモータースポーツマシンをテーマに選んだのはWEC世界耐久選手権に投入されるハイパーカーの各車。それぞれのマシンの魅力を深掘りしていこう。

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     WEC(FIA世界耐久選手権)の最上位カテゴリーであるハイパーカーは、2023年シーズンから北米のスポーツカーシリーズ、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の最上位カテゴリーであるGTPと相互乗り入れすることになった。この結果、WECのハイパーカーカテゴリーは、WECが規定するLMH(ル・マン・ハイパーカー)と、IMSA GTPのLMDhが同じ土俵に立つことになった。

     自動車メーカー系ではトヨタ(TOYOTA GAZOO Racing)が2021年からWECにLMH規格のハイパーカー『GR010ハイブリッド』を投入しており、2022年にプジョーが『9X8』を投入。2023年にはフェラーリがLMH規定を選択し、『499P』を持ち込んだ。
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    2023年仕様のトヨタGR010ハイブリッド
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    WEC世界耐久選手権のハイパーカークラスに参戦している93号車プジョー9X8
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    フェラーリAFコルセが2023年のWECハイパーカークラスに投入した『フェラーリ499P』

     一方、LMDhを選択してWECに参戦してきたのはポルシェ(963)とキャデラック(VシリーズR)である。2024年にはランボルギーニ(SC63)、アルピーヌ(A424)、BMW(MハイブリッドV8)のLMDh勢がシリーズに加わる予定だ。

    ■エンジン形式は比較的自由。LMH規定であればロータリーエンジン車も出場可


     ハイパーカーの技術規則ではエンジンの排気量や気筒数に制限を設けておらず、最高出力を520kWに規制しているのみだ(パワーカーブも規定している)。2020年までのLMP1時代は、熱効率を向上させたぶんだけ性能面でアドバンテージを得られたが、最高出力が規制されているので、熱効率を追求するエンジン開発は意味を持たない。

     トヨタはLMP1時代のTS050ハイブリッドにプレチャンバーイグニッション(PCI)を適用した2.4リッターV6ツインターボエンジンを搭載していたが、LMHの『GR010ハイブリッド』には新開発した3.5リッターV6ツインターボエンジンを載せる。

     熱効率の向上分を出力ではなく燃費に振り向けてもいいが、いくら性能を向上させても最終的にはBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)で調整されてしまうので、開発を頑張る意味がない。トヨタはPCIの利き代がなくなったとして、『GR010ハイブリッド』の3.5リッターV6ツインターボエンジンにはPCIを適用せず、通常の燃焼に戻している。

     エンジンの技術開発面では正直、面白味を失っているのが現状。楽しみは、各メーカーがどんな形式のエンジンを選択したか、という要素のみになっている。しかし、それはそれでバラエティに富んでいるし、メーカーの個性が出ていて興味深い。

     プジョーはバンク角90度の2.6リッターV6ターボエンジンを新規に開発して『9X8』に搭載。フェラーリは量産モデルの『296』向けに開発した3.0リッターV6ツインターボをLMH用に仕立て直して搭載している。

     このV6エンジン、等間隔爆発となるようVバンク角を120度にしており、広いバンク間に排気系を搭載するホットVを採用しているのが特徴だ(『GR010ハイブリッド』の3.5リッターV6も同様のレイアウト)。
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    ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車ポルシェ963
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    キャデラックVシリーズ.R

     LMDh規定車の『ポルシェ963』は、4.6リッターV8ツインターボを搭載(やはりホットV)。このエンジンのベースは、量産モデルの『918スパイダー』が搭載していたユニットだ。

     レース車両に適したドライサンプを採用していたこと。高出力化に有利なフラットプレーン・クランクシャフトを採用していたこと。低重心化やリヤサスペンションのマウントに向いているショートストロークの諸元になっていたこと(エンジンの高さを抑えられる)などが、採用の決め手だったという。こういうストーリー性、大好きである。

    『ポルシェ963』のV8エンジンと好対照なのが、キャデラックVシリーズRの5.5リッターV8自然吸気エンジンだ。

     キャデラックはポルシェのような合理性ではなく、伝統を重んじ、クロスプレーン・クランクシャフトを選択した。その結果、彼らの表現を借りれば“ビーストリー(Beastly:野獣的)”なサウンドを奏で、そのサウンドのおかげで「キャデラックVシリーズRはサーキットのどこにいるかが瞬時にわかり、間違いようがない」存在になったと主張する。

     まさにそのとおりで、キャデラックVシリーズRは音で明確に識別できる希有な存在だ。しかも、ベスト・サウンド・オブ・ザ・イヤーがあるなら贈呈したいくらい、刺激的で豪快で、とってもいい音がする。

     キャデラックのV8サウンドを聞く目的だけでも2024年のWEC富士6時間(9月15日決勝)に出向く理由になると思うし、新たにハイパーカーのラインアップに加わる『ランボルギーニSC63』(3.8リッターV8ツインターボ)や『アルピーヌA424』(メカクローム製3.4リッターV6シングルターボ)、すでにIMSAには参戦している『BMW MハイブリッドV8』(4.0リッターV8ツインターボ)がどんなサウンドを奏でるかにも注目しておきたい。
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    南仏のポール・リカールでテストを行う、ランボルギーニ・アイアン・リンクスの『ランボルギーニSC63』
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    ヘレスでテストを行うアルピーヌA424
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    スパ・フランコルシャン・サーキットでテストを行うBMW MハイブリッドV8

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